ラジオ特別番組 2022

2022年10月22日(土) 午後3時30分~4時

ぎふチャン ラジオ 特別番組

ぎふピンクリボン ~まずは、わたしが持続可能に!~

 

<番組概要>

SDGs目標「すべての人に健康と福祉を」「働きがいも経済成長も」を念頭に、「まずは、わたしが持続可能に」をテーマに掲げ、ぎふピンクリボン実行委員会が展開する乳がん啓発番組。専門医師と罹患者から、乳がんの早期発見・早期治療の大切さ、働きながら治療をする上での支援体制などについて伺います。

 

<出演者>

岐阜大学医学部附属病院乳腺外科 二村学 科長
平松亜希子




特別番組 ぎふピンクリボン ~まずは、わたしが持続可能に!~

 

この番組は、サンメッセ株式会社、明治安田生命の協力、また、岐阜県「清流の国ぎふ」SDGs推進ネットワーク連携促進補助金を受けています。

   

平松代表/こんにちは。ぎふピンクリボン実行委員会代表の平松亜希子です。

最近よく耳にするSDGs。これは誰1人取り残さないという理念のもとで、世界が持続可能な社会を目指す国際的な目標です。SDGsの中には、地球環境の保護から貧困問題まで、幅広い課題の解決を目指す17のゴールが定められています。

持続可能であるべきは地球だけではありません。何よりも、私たち自身が健康で持続可能な体作りをしていかなければ、地球も家族も自分の生活も守ることはできません。そこで、今月10月のピンクリボン月間にちなんで、乳がんについて岐阜大学医学部附属病院乳腺外科科長の二村学先生や、罹患者である小野木奈美さんからお話を伺い、乳がんについて改めて正しい知識を持っていただくこと、そして、健康診断やがん検診の受診率向上、健康づくりに向けた意識向上を目指します。

 平松代表/乳がんは女性にとって非常に身近な病気ですが、乳がんの罹患者はどのぐらいいらっしゃるんですか。

二村先生/今、がんは国民の2人に1人が罹患し、3人に1人が亡くなっています。そんな中でも乳がんは、女性にとって1番なりやすいがんといわれています。最近の統計では、年間約10万人の方が日本で乳がんに罹患されているという報告があります。

平松代表/世界的に見ても、乳がんの罹患者は多いですね。

二村先生/その通りです。ヨーロッパやアメリカなどの先進国は、乳がんが非常に多いことが分かっていました。ところがそれのみならず、例えばアフリカや南米といった国々も、昔と比べると乳がんがここ10年ぐらいで急激に増え、世界の150以上の国及び地域で、女性のかかるがんの中で、乳がんが1番多くなってきています。

平松代表/そんな乳がんですが、早期発見・早期治療で治るがんともいわれています。ただ、乳がん検診の受診率というのは、そこまで高くはないようですね。


二村先生/そうですね。乳がん検診の受診率は、10年前で約40%弱、現在もまだまだ50%に到達していないので、たくさんの方々に検診が受けていただければいいなと思っています。

いわゆるリピーターの方は、ずっと受けておられる方が多いのですが、50%を超える女性は、まったく検診を受けてないため、検診率が十分上がっていません。対して欧米、特に北欧では90%以上の方が検診を受けていますし、アメリカでも検診受診率は7割です。やはり国民の意識を高めるための努力が大事じゃないかと思っています。

平松代表/小野木さんも乳がん検診は受けられていたんですね。

小野木さん/はい、35歳くらいから毎年受けていました。

 

平松代表/その検診を受けている中で、乳がんが見つかったんですか。

小野木さん/そうです。まさに検診を毎年受けていたからこそ、発見できたんだなと改めて実感していますので、身をもって検診の大切さを体験した1人です。

平松代表/よく罹患した方は、「まさか自分が」と思ったと言われますが、小野木さんもそうでしたか。

小野木さん/その通りでした。検診を受けてはいたんですが、そこで発見するということはまったく想定してなかったです。まさか自分がという受け入れ難いことが起こったというのが第一印象で。これは私だけではなく、家族も同じ気持ちだったと思います。

平松代表/先生はそういう方をたくさんご覧になっていますね。

二村先生/そうですね。多くの方はやっぱり、自分が乳がんになるなんてと思っておられませんので、 非常にびっくりされます。日本人の女性は、一生涯の中で9人に1人が乳がんになる計算です。つまり、女性が10人集まれば1人なるぐらいの確率。まさしく誰がなってもおかしくないということです。ただ、早く見つければ、自分のみならず家族や周りの人たちも、心配しなくても済みますので、本当に早期発見は重要だと思っています。

平松代表/小野木さんは早期に発見できたんでしょうか。

 

小野木さん/はい。発見した当初はショックが大きく、実感はなかったんですが、6ミリという非常に小さい段階だったと、医師には

言っていただけましたので、早期発見できたと改めて思っています。

平松代表/早期の段階では、自覚症状は出ないのでしょうか。

二村先生/乳がんは、基本的に体の表面にできますので、運がいいと小野木さんのように、5ミリ6ミリのしこりに触れることもありますが、一般の方はどれがしこりでどれが正常か、判断は難しいと思います。ただ、検診を1年、あるいは2年ごとに受けるだけでなく、1ヶ月に1回でも自分で乳房を触る機会をもっていると、わずかな変化を見つけたと いう方も実際にいらっしゃいます。大事なことは、検診だけではなく、ご自身でも触ってわずかの変化があれば受診していただくことです。

小野木さん/やはり自分で常日頃から体に関心を持つことが大事なんですね。

二村先生/自分で乳房を触る時、よくお風呂で触るという方がいらっしゃいますが、お風呂の中で触ろうと思うと、どうしても乳房の上の部分をなでるようにしかできないんですよ。ですので、寝る時にリラックスした状態でベッドに横になり、上から下まで満遍なく触っていただくと、今まで気づかなかった異常を発見することも、実際今までにも聞いていますので、そういった形で510分でいいですから、されるといいんじゃないかと思います。

平松代表/乳がんの生存率はいかがでしょうか。

二村先生/乳がんは、治りやすいがんのベスト3に入っています。なんと乳がんは、5年生存率が92%、10年生存率も87%なんですよ。昔はがんと言われたら死の病と思われていましたが、決してそうではないということを認識していただければと思います。

平松代表/それでも、がんと宣告される時は、ショックが大きいですよね。

小野木さん/そうですね。もうショックという言葉以外、見つからないです。まず最初に思ったのが「死んじゃうのかな」と。

この先何年生きられるんだろうということが、やっぱり最初に頭をよぎりました。なので「これは治るんですか?」と医師に聞きました。

平松代表/先生はなんておっしゃったんですか。


小野木さん/治すために治療しましょう、一緒に頑張りましょうと言っていただけたので、ついていくしかないと思い「お願いします」とお話しました。

二村先生/私たちも、やはり皆さんショックを受けることはこちらも感じますので、言葉を慎重に選びながら、その方が今後どうしていったら病気を乗り越えて、また新しい生活に戻っていけるか、ということを考えるための方策をご提案し、共に考えて治療していけたらと思いながらお話をさせていただいてます。

平松代表/乳がんは治りやすい病気という認識は、皆さんには広がってるんですか。

二村先生/そう思います。ただやはり、昔ながらのがん=死というイメージが、まだまだ払拭されてないことも感じます。特に乳がんは、他のがんに比べると、病気になる年齢が1020歳ぐらい若いんですよね。40歳、50歳といったまだまだ子供が小さく、社会で活躍しているというさなかで、病気宣告を受けることが多々あります。そういうことからすると、患者さんにとってこの先の不安は、計り知れないものがあると思います。
 ただ、人間はそういったショックを乗り越える力を持っていると思います。さまざまな治療のデータ、統計学的な情報、そういったものをよくよく見ると、決して死の病ではなく乗り越えて頑張ればいい。

 また、最近は有名人の方々の闘病記録なども出ています。そういった方々が元気になっている姿を我々も目にするようになりました。そういったことから、患者さんは少しずつ力をもらいながら、病気と戦う準備を整えると、いい結果を生んでいるように私は考えています。


平松代表/病気と戦いながら、生活をしていかないといけないですからね。 ただ宣告をされて、生活をストップしてしまう方もいらっしゃいますよね。

二村先生/そうなんです。患者さんによっては悪い方向へと考えがちになって、その次にお会いしたら、「もう仕事辞めました。これで治療の方に専念します。」と言われる方がいらっしゃるんですよね。確かに素晴らしいことですが、「 ちょっと待ってください。決してこれで人生が終わりじゃないんです。一緒に頑張っていきましょうね。」ということを伝えたいですね。患者さんの4割がびっくりして仕事をやめてしまう。これを「びっくり離職」といいます。私たちは乳がんの患者さんと接する上でも、そういったことへの配慮を常にしなければならないということを認識している次第です。

平松代表/小野木さんは「びっくり離職」をされたんでしょうか。

 

小野木さん/私はしなかったです。ただ、やはり先生には、宣告を受けた時、「仕事は続けられますか。」と聞きました。先生からは「続けられますよ」と言っていただけたので、仕事は続けられるんだなという認識は持つことはできました。

平松代表/実際に治療をしながらの仕事は、順調だったんですか。

小野木さん/そうですね。まず手術時と手術後の自宅療養をするために、長期のお休みをいただきました。その後も治療で毎日通院しなければいけなかったので、職場にとったら大変な負担をお願いしたと思いますが、ありがたいことに甘えさせていただけたので、順調に乗り越えることができたと思います。

平松代表/職場の受け入れ体制も大事ですよね。もし、身近に患者がいたとしたら、職場の方はどんな声をかけたらいいんでしょうか。

小野木さん/「安心して治してきて。」「待ってるよ。できることは一緒にやっていきましょう。」 ということでしょうか。当然、本人は不安しかないので、「一緒に自分たちも戦ってるんだよ。」というような気持ちでお声をかけていただけるといいなと思います。誰がなってもおかしくない病気ですし、誰が長期で病気を治さないといけない状況になるか、いつなるかもわからないので、 お互い様という形で、支え合っていけたらなと思います。

平松代表/地域や会社の支援体制は、なかなか皆さんご存知じゃないですよね。

二村先生/そうですね。がんはまず治療するということが前面に出されて、それを取り巻く環境の整備ってなかなかなかったんですよね。ところが今から10年前に、国ががん対策推進基本計画を掲げて、そこの中に「がん患者の就労を含めた社会的問題」がはっきり明記されてから、この10年ぐらいの間にそういった意識が広がってきました。特に患者さんの労働先で上司や社員の方々が患者さんの身体状況を把握して、業務調整をするようなシステムを整える法的整備が、今少しずつ進んでいます。
 また、病院には必ず両立支援センターがあり、保健師やソーシャルワーカーが会社と患者さんの間に入って調整やアドバイスをすることも行っています。岐阜大学医学部附属病院では、ハローワーク職員の出張面談もあり、労働条件の調整、新たな労働場所の提供など、さまざまなシステムが動き出しているという現状があります。
 もう1つ経済的な問題も非常に重要です。やはり治療にはお金がかかりますが、例えば高額医療制度や医療費控除、疾病手当金などの利用についてまだまだ認知度が低いということがありますので、そういった関係も支援センターからシステムの紹介をするようにしています。

平松代表/それでは、先生と小野木さんから一言ずつメッセージをいただきたいと思います。

 

小野木さん/やはり常に自分の体に興味を持って、検診を受けていただきたいと思います。他人に起こることではなくて、誰にでも起こりうることだという意識を持っていただきたいなと。私は検診を受けていたからこそ、早期発見につながって、数年たった今では薬もなくなり、完治をしたんではないかなと自分でも区切りがついたと思える状態になりました。やはり検診を受けて体のケアをしっかりしていただいたからこその今の生活があり、家族といろんなことを楽しめていますので、ぜひ検診を受けていただきたいなと思います。


二村先生/乳がんは決して死の病ではありません。しかしながら、早期に発見することは非常に重要で、ご自身の負担のみならず、ご家族、あるいは職場の皆さんにも負担になることは間違いありません。病気になることは仕方がないことですので、ぜひとも検診を受けていただいて、早期に発見して、みんなで明るい未来をつくれるようになっていけたらいいなと思います。そういった患者さんがおられた場合には、私たちも全力で取り組んで、その方の人生に少しでも幸せを取り戻せるようなそんな日々にしていきたいなと思っておりますので、皆さん検診をぜひとも受けてください。
 

平松代表/ご自身のため、そして、ご家族を含めた大切な方のためにも、ぜひ自分自身の健康に目を向けていただきたいと思います。二村先生、そして小野木さん、ありがとうございました。